掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏などに膿(うみ)をもった水ぶくれ(膿疱:のうほう)ができ、それらがつぶれては治り、治ってはできるというのを繰り返す皮膚の病気です。
水ぶくれは手や足のほかに肘やすねにもできることがあり、出始めにはかゆみをともないます。
水ぶくれが乾くと“かさぶた”となって剥がれ落ちますが、良くなったり悪くなったりを周期的に繰り返すのが特徴です。ただし水ぶくれの中に菌などは存在しないため、周囲の人にうつす心配はありません。
掌蹠膿疱症の原因や発症のメカニズムについては、いまだ明らかになってない点も多くあります。ただその中で少しずつ明らかになってきているのが、以下に挙げる『歯科用金属によるアレルギー』や『お口の中の病巣(根尖性歯周炎・歯周病)』との関連性です。
金属アレルギーというと、金属と直接接している皮膚や粘膜に赤いブツブツや水ぶくれ、かゆみなどをともなうのが一般的です。
歯科においても治療で使用した金属がお口の中に溶けだした結果、粘膜にさまざまなアレルギー症状を引き起こすことがあります。
そして近年はさらに唾液や血液を介して体内へと侵入したこれらの歯科用金属によって、掌蹠膿疱症を発症したケースがいくつも報告されています。
掌蹠膿疱症の中には、お口の中の病巣が発症に関与しているものがあります。その具体的な病巣として、歯の根っこの先に膿がたまる『根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)』や、歯ぐきの炎症で代表的な『歯周病』などが挙げられます。実際にこれらの治療をおこなった結果、掌蹠膿疱症の改善がみられたケースが複数報告されています。
掌蹠膿疱症の悪化因子がお口の中に存在するケースでは、その因子に対する適切な処置をおこなうことで、掌蹠膿疱症の症状が改善する可能性があります。
パッチテスト(アレルギーテスト)をおこない、歯科用金属に対するアレルギーの有無を確認します。アレルギーがある可能性が高いケースでは、金属の詰め物や被せ物を除去し、セラミックなどアレルギーをおこさない素材に置き換えていきます。
根尖性歯周炎があるケースでは歯の内部の詰め物などを取り除いて、根っこの再治療(感染根管治療)をおこないます。歯周病が疑われるケースでは、スケーリング・SRPなどのクリーニングをおこないながら病状の改善に取り組んでいきます。
掌蹠膿疱症の中には歯科治療によって改善が見込めるケースがある一方、皮膚症状とお口の病気との関連性については歯科医の中でもあまり周知されていないのが現状です。
もし原因がわからない皮膚症状にお悩みであれば、一度お口の中をチェックしてみることをおすすめします。
当院でも種々の検査や治療をおこなっておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。